これからの住宅に求められる性能とは?
地球温暖化対策として、日本では省エネ住宅の建設促進に向けた法整備が進められています。エネルギーに依存しない健康で快適な住宅をつくるうえで知っておくべき事柄をQ&Aで学びましょう。
- 2020年までに義務化される省エネルギー基準では、何が求められますか?
- 「断熱・気密ナビ」で紹介している「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」によって、住宅の性能はどのくらい向上するのでしょうか?
- G1、G2とはどのような推奨水準ですか?
- 地域によって求められる基準値が異なるのはなぜですか?
- G1、G2水準を満たした住宅には、どんなメリットがあるのでしょうか?
- 体感温度の変化は、私たちの身体にどのような影響を与えるのでしょうか?
- 「断熱・気密ナビ」でめざしている住宅の性能は、私たちの健康を維持するうえでも大切だということですね?
- 「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」は、防火地域でも有効でしょうか?
- 夏の暑さ対策として、どのような方法がありますか?
2020年までに義務化される省エネルギー基準では、何が求められますか?
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下、建築物省エネ法)が、2015(平成27)年7月に公布されました。この法律を受けてその翌年に公布された「平成28年省エネルギー基準」(以下、平成28年省エネ基準)のレベルは、以前の基準を継承し大きく変わりませんでしたが、建築物省エネ法ができたことで、規制措置と誘導措置により将来の義務化に向けたロードマップが示されました。
建築物省エネ法によるロードマップを踏まえて、2017年4月より、非住宅の2,000㎡以上を新築(増改築)する場合は、平成28年省エネ基準への適合が義務化されるようになりました。その後、小規模・中規模の建築物についても、段階的に義務化が進められ、2020年までには、新築・増改築される建築物はすべて平成28年省エネ基準に適合することを義務づけられる予定です(表1)。
2020年に適合を義務づけられる基準では、非住宅・住宅にかかわらず外皮性能と一次エネルギー消費量の基準への適合が求められます。求められる基準の詳細は、義務化が導入された時点で示されることになっていますが、おそらく平成28年省エネ基準よりも緩くなることはないでしょう。外皮性能に関しては、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」における断熱等性能等級4相当が義務化レベルとなると考えられます。つまり、これまで高性能といわれてきた建物の仕様が、2020年以降、義務化されるともいえるのです。
さらに快適な住宅をつくるためには、平成28年省エネ基準よりも性能の高い「1歩先」「3歩先」をめざす必要があるのです。
建築物省エネ法によるロードマップを踏まえて、2017年4月より、非住宅の2,000㎡以上を新築(増改築)する場合は、平成28年省エネ基準への適合が義務化されるようになりました。その後、小規模・中規模の建築物についても、段階的に義務化が進められ、2020年までには、新築・増改築される建築物はすべて平成28年省エネ基準に適合することを義務づけられる予定です(表1)。
表1 省エネルギー基準の義務化に向けたロードマップ
2017年4月~ | 2020年~ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
大規模建築 (非住宅2,000㎡以上) |
届出義務 | 適合義務 | ||||
中規模 (建築物300~2,000㎡) |
努力義務 | 届出義務 | 2020年までに段階的に適合義務化 | |||
小規模 (建築物300㎡以下) |
努力義務 | 2020年までに段階的に適合義務化 |
さらに快適な住宅をつくるためには、平成28年省エネ基準よりも性能の高い「1歩先」「3歩先」をめざす必要があるのです。
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「断熱・気密ナビ」で紹介している「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」によって、住宅の性能はどのくらい向上するのでしょうか?
「断熱・気密ナビ」で紹介している「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」は、2020年に義務化される基準を超える性能を目指す指針の一つである、G1、G2という推奨水準をもとに作成しました。→G1、G2とはどういう水準ですか?
「1歩先」で示している仕様が満たすUA値0.46 W/(㎡・K)という値は、G1水準を参考にしており、平成28年省エネ基準では北海道や東北地方(1・2地域)に求められている性能です。「3歩先」の仕様(UA値0.34 W/(㎡・K))は、G2水準を参考にしており、G1よりもさらにその上の断熱性能を実現します(表2)。
「1歩先」「3歩先」を目指すことで、暖房負荷を削減することが可能です。平成28年省エネ基準と比べ、1歩先(G1レベル)で30%以上、3歩先(G2レベル)で50%以上削減できると試算されています。
木造戸建て住宅は、冬は寒くて夏は暑く、しかも暖冷房が効きにくいと思っている人が多いでしょう。しかし、冬暖かく、夏涼しい、しかも省エネな木造住宅をつくることは可能です。「断熱・気密ナビ」で紹介する「1歩先」「3歩先」のつくりかたは、そうした住宅づくりをめざしています。
「1歩先」で示している仕様が満たすUA値0.46 W/(㎡・K)という値は、G1水準を参考にしており、平成28年省エネ基準では北海道や東北地方(1・2地域)に求められている性能です。「3歩先」の仕様(UA値0.34 W/(㎡・K))は、G2水準を参考にしており、G1よりもさらにその上の断熱性能を実現します(表2)。
「1歩先」「3歩先」を目指すことで、暖房負荷を削減することが可能です。平成28年省エネ基準と比べ、1歩先(G1レベル)で30%以上、3歩先(G2レベル)で50%以上削減できると試算されています。
木造戸建て住宅は、冬は寒くて夏は暑く、しかも暖冷房が効きにくいと思っている人が多いでしょう。しかし、冬暖かく、夏涼しい、しかも省エネな木造住宅をつくることは可能です。「断熱・気密ナビ」で紹介する「1歩先」「3歩先」のつくりかたは、そうした住宅づくりをめざしています。
表2 外皮性能の地域別基準値(外皮平均熱貫流率:UA値)の比較
寒い (北海道など) |
◀ | ▶ | 暖かい (沖縄など) |
||||||
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成28年省エネ基準(2020年までに適合が義務化される予定の基準) | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | - | ||||
HEAT20が推奨する水準 | G1 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | - | ||
G2 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | - |
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G1、G2とはどのような水準ですか?
G1、G2とは、研究者、住宅・建材生産者団体の有志で構成された「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会(HEAT20)」という委員会が提示しているもので、「エネルギー」「環境の質」「コスト」がバランスよく調和した住宅を目指すための水準です。「G」はグレードのGを示しており、グレード1をG1、G1よりも高いグレード2をG2として、各地域別にG1、G2で目指すべき外皮平均熱貫流率(UA値)の推奨水準が決められています。
「断熱・気密ナビ」では、2020年までに予定されている平成28年省エネ基準の義務化を見据え、その「1歩先」「3歩先」の住宅づくりをめざすにあたり、G1、G2という推奨水準を参照しています。
「断熱・気密ナビ」では、2020年までに予定されている平成28年省エネ基準の義務化を見据え、その「1歩先」「3歩先」の住宅づくりをめざすにあたり、G1、G2という推奨水準を参照しています。
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地域によって求められる基準値が異なるのはなぜですか?
暖房に使用するエネルギー量を北海道と東京で比較すると、外気温が低く日射量の少ない北海道のほうが大きくなります。つまり、暖冷房に使用するエネルギー量は、外気温や日射量等によって異なるということです。
そこで、一次エネルギー消費量や外皮性能の基準を定めるために、似たような気候(外気温、日射量)の地域をまとめて全国を8地域に区分し、目指すべき基準が示されています。
地域区分は、一番寒い地域である北海道を1として、暖かい地域に向かって8地域が設定されています(図1)。
そこで、一次エネルギー消費量や外皮性能の基準を定めるために、似たような気候(外気温、日射量)の地域をまとめて全国を8地域に区分し、目指すべき基準が示されています。
地域区分は、一番寒い地域である北海道を1として、暖かい地域に向かって8地域が設定されています(図1)。
図1 地域区分
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G1、G2水準を満たした住宅には、どんなメリットがあるのでしょうか?
G1、G2水準を満たすことで暖房負荷を低減することができます(表3)。さらに、冬期における室内の最低体感温度が向上します(表4)。
表3 想定する暖房方式における暖房負荷削減率※1(平成25年省エネ基準レベルの住宅との比較)
地域区分 | 1・2 | 3 | 4~7 | |
---|---|---|---|---|
HEAT20が推奨する水準 | G1 | 約20%削減 | 約30%削減 | |
G2 | 約30%削減 | 約40%削減 | 約50%削減 |
※1 暖房負荷削減率:暖房負荷とは、暖房のために必要となる熱量を示し、一次エネルギー消費量基準に用いる暖房用一次エネルギーとは異なる。削減率とは、表5に示す暖房方式の暖房負荷について、平成25年省エネ基準との増減比率を示したものである。
表4 想定する暖房方式における冬期間の最低の体感温度※2
地域区分 | 1・2 | 3 | 4~7 | |
---|---|---|---|---|
HEAT20が推奨する水準 | G1 | 概ね13℃を下回らない | 概ね10℃を下回らない | |
G2 | 概ね15℃を下回らない | 概ね13℃を下回らない | ||
参考:平成25年省エネ基準レベル | 概ね10℃を下回らない | 概ね8℃を下回らない |
※2 ここで示した体感温度とは、気温、壁・天井等の平均表面温度、気流の影響を加味した作用温度のことであり、一定の暖房条件のもと、通年にわたる住空間の有効利用、冬季厳冬期の住宅空間内における表面結露・カビ菌類による空気汚染や健康リスクの低減なども踏まえて設定している。
表5 想定する暖房方式
地域区分 | 1・2 | 3 | 4~7 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
暖房方式(暖房時間) | LDK | 連続暖房(24時間) | 連続暖房(平日:24時間/休日:19時間) | 在室時暖房(深夜・日中は除く) | (平日:14時間/休日:13時間) | |
主寝室 | 在室時暖房(深夜・日中は除く) | 全日9時間 | 全日3時間 | |||
子ども室 | 平日:3時間/休日:7・10時間 | 平日:3時間/休日:7・10時間 | ||||
和室 | 暖房なし | |||||
トイレ、廊下、浴室、洗面所 | 暖房なし | 暖房なし |
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体感温度の変化は、私たちの身体にどのような影響を与えるのでしょうか?
冬期の入浴時など、急激な温度差によって血圧が大きく変動する「ヒートショック」は、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす原因になるといわれています。浴室だけではなく、冷え込んだトイレや洗面所には、こうした危険が潜んでいるといえるでしょう。室内温度が12℃以下の部屋で過ごす場合、血圧上昇、心臓血管疾患のリスクが高くなることから、室内温度21℃を推奨するという英国保健省の指針があります(図2)。建物の断熱性能を向上させ、一定の室内温度を保つことは、エネルギーの使用量を減らすだけでなく、私たちの健康維持のためにも大切なことなのです。
図2 室温と健康リスクの例 (参考資料:「英国保健省年次報告書」2010年3月)
「マドコト」日本の住まいの健康リスク
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「断熱・気密ナビ」でめざしている住宅の性能は、私たちの健康を維持するうえでも大切だということですね?
そうですね。建物の断熱性能は、エネルギー消費量だけでなく、暮らしの質や居住者の健康にも影響していることをよく理解して、安定した室内温度を保つ住宅づくりを実践しましょう。
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「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」は、防火地域でも有効でしょうか?
防火地域に対応している商品を採用し、「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」で紹介している仕様を満たせば、表6のような性能が実現できます。防火地域に対応する窓には「APW330防火窓」、玄関ドアには「防火ドアGシリーズ ヴェナートD2仕様」というトップランナー商品があります。
防火地域の対応についてさらに詳しく
表6 防火地域にて「1歩先のつくりかた」「3歩先のつくりかた」相当のUA値※に対応する仕様
防火地域での「1歩先のつくりかた」相当 UA値 0.48 W/(㎡・K) |
防火地域での「3歩先のつくりかた」相当 UA値 0.41 W/(㎡・K) |
|
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天井 | 高性能グラスウール16K 200mm | |
外壁 | 高性能グラスウール16K 100mm | 高性能グラスウール16K 100mm+押出法ポリスチレンフォーム保温板3種 30mm |
床 | 押出法ポリスチレンフォーム保温板3種 90mm | |
土間床など | 押出法ポリスチレンフォーム保温板3種 50mm | |
窓 | APW330防火窓 Low-E複層ガラス 断熱タイプ ブルー アルゴンガス入 アルミスペーサー |
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玄関ドア | 防火ドアGシリーズ ヴェナート D2仕様(2.33) |
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夏の暑さ対策として、どのような方法がありますか?
夏期、室内に入り込む熱の7割以上※は「窓」からといわれています。窓に日よけをつけることで、エアコンの効きがよくなり快適な室温が得られます。
「断熱・気密ナビ」で紹介している「1歩先」「3歩先」の仕様では、日射遮蔽型(日射熱取得率0.49以下)の窓を採用していますが、冬期に窓から日射を取り入れることが可能な立地の場合は、日射取得型ガラス(日射熱取得率0.50以上)の窓を採用し、夏期の暑さ対策として窓に日よけを設けることが有効です。
日よけの例
オープンルーバー
アウターシェード
オーニング サンブレロ
グリーンバー
「断熱・気密ナビ」で紹介している「1歩先」「3歩先」の仕様では、日射遮蔽型(日射熱取得率0.49以下)の窓を採用していますが、冬期に窓から日射を取り入れることが可能な立地の場合は、日射取得型ガラス(日射熱取得率0.50以上)の窓を採用し、夏期の暑さ対策として窓に日よけを設けることが有効です。
※「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説 Ⅱ住宅」標準住戸のプランにおける例(AE- Sim/HeatによるYKK APの計算結果より。窓種:アルミ〈複層ガラス〉 外気温33.4℃/室温27℃の場合)。
日よけの例
オープンルーバー
アウターシェード
オーニング サンブレロ
グリーンバー
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